鋳造(ちゅうぞう)ペグなんてものは世の中にないと考えていた。
2018年の記事:ペグは鋳造なのか鍛造なのか
職業がら、鋳造(ちゅうぞう)ときくと心配になる。もし自らでペグを設計する場合、鋳造は避ける。予期しない欠陥が入りやすく、信頼性が低くなりがちだからだ。鋳造だからといってすべてが信頼性が低いわけではない。しかし、生命を守る部品であること、少量生産品であること、これらの理由からまともなエンジニアであれば鋳造は使わない。自称鋳造エンジニアである自身が言っているので間違いない。
間違いない、とか言っている自身の見識の狭さが恥ずかしい。
鋳造ペグは存在する。
ロゴスのペグを以下記事と同じ方法で調べた結果、鋳造かな?という結論に至った。
全体の写真をみると、ソリッドステーク、エリッゼステークなどの鍛造ペグとは形状が異なる。
表現し難いが人工的な形状をしている。
反対面も同様の意匠を示していた。
ロゴは裏表にLOGOSの文字が凸文字で記載されていた。
ここで気になるのが以下の2点だ。
1) 砂型の転写のようなものがみられる。
2) 鍛造ペグにみられた厚いパーティングラインがみられない。
順を追って説明する。
以下の写真の赤色で矢指した部分は凸になっている。
工具鋼を使う金型にこんなへこみ(製品は凸)は現れないはずだ。
この現象が生じるのは砂型の方が可能性が高い。
砂型がバーニングで消失したか、砂が落ちたか、どちらかはわからないが、砂型の凹部があると製品に凸が転写される。
また、鍛造ペグに見られた厚いパーティングラインが見られない。
工法は鍛造ではないことが推察される。
ただ、型と型を合わせた跡はみられる。
ミクロ組織観察なるものをやってみた。
破壊調査になるので少し勇気がいる(660円が・・・)。
ペグの先端を輪切りにして、鏡面に磨き、エッチングをすると金属の模様がみえる。
ペグ中心部(矢印)に鋳巣が・・・
冒頭では自身の見識の狭さが〜とか言っていたが、いわんこっちゃない、と正直思った。
ペグに鋳造工法は使ったらダメ、な気がする。
こちらはエッチング前のミクロ組織。
ところどころに黒い点がみえるが基本的には白い。
ナイタルでエッチング後がこちらのミクロ組織となる。
知識がなく、初めてみるミクロ組織だった。
デンドライトは感じない、フェライト、パーライトのようなものがみられる。
変なグラファイトがみえるし、何これ?というのが正直な感想だった。
拡大してみたのがこちらとなる。
チル(セメンタイト)かな?と思わなくもない。
硬さ測定機(マイクロビッカース)があればある程度わかるがそんなもの家にあるはずもない。
白鋳鉄と言われるものになるのだろうか。
いまの自分ではミクロだけでは判断できない。
おもしろい、ミクロの世界。
今回はロゴスのペグを調べてみた。
固定観念(思い込みではない)でモノをいうことをお許し願いたいが、ペグに鋳造はいかがなものかと思う。
事実、鋳巣がある。
また白鋳鉄だった場合、ペグに耐摩耗性や硬さはあるが靭性がない。
欲を言えば、発光分析と硬さ測定がしたい・・・
初めまして
超マニアックですね(笑)
ペグの設計というキーワードで検索していたら、こちらに辿り着きました
ソリステとエリステの組織観察の記事も読ませていただきました
いや〜、凄いです
ロゴスのこれは、、、張り切って型まで作ったのに、この中途半端な出来が、まさしくロゴスですね(笑)
いやはや、専門家ならでは素晴らしい記事をありがとうございました
コメントありがとうございます!
S45Cのペグ!
実用的には最強ですよね。
ロゴスさん、漢字を間違えられたのか、良いと思ったのか・・・
アルミニウムダイカストで作られているペグまで出てきており、まさにペグ戦国時代です。
>そんなもの家にあるはずもない
わははは!
ここでそのセリフがでるのですか!
おもしろすぎます。
そうなんです、残念ながらないんです。
設備さえ揃えば、材料、工法、おおよそのコストが丸裸にできる世界・・・
ロゴスさんの企画時の間違えた感がなかなか楽しめました。
コメントありがとうございます!