夏休みの自由研究!?ペグの焼入れを考える

ヤキをいれる。ヤンキー御用達の用語かと思いきや、実は工学用語。鋼の強度を増すために行う工程が”焼入れ”だ。今回はペグを焼入れしたら強くなるんじゃないかと思い、試してみた。子どもにこのページのうんちくを垂れるとすぐ飽きるので注意して試してほしい。理科の実験というか材料工学の基礎でもあるので、夏休みの自由研究の題材にもいいかもしれない。

塗装してあるペグは焼入れすると塗装が割れる(はずな)ので、焼入れするのであれば写真右のようなピンペグが適している。したがって、ピンペグベースで考えていただきたい。

ペグに関する別記事はこちら”ペグは鍛造なのか鋳造なのか”

焼入れに適しているのはピンペグ

用意するもの

  • 焚き火台
  • トング
  • 炭ないし薪(備長炭が良い)
  • バケツ+水(鍋でOK)
  • 手袋

 

ペグの焼入れのやり方

  1. 熱源を用意(焚き火、BBQの後が良い)
  2. 焼入れ温度の検証
  3. ペグを赤く光っている熱源に投入
  4. 水槽にペグを投入
  5. ペグを焼き戻し
  6. 参考 エリッゼステークの強度

 

1. 熱源を用意

写真のような赤々と鈍く光る炭を用意する。BBQや焚き火の終わりで酔っ払ってるとやけどするので注意が必要だ。バーナーでもいいと思うが局所的に加熱されやすくなるため、古典的な炭火をおすすめしたい。

炭の温度

 

温度計測はキャンプ場でできないので、目視で色の温度を判断する。日立金属株式会社の色見本が便利。色でおおよその温度を推定する。これであなたも職人。

温度と色の関係

リンク元:日立金属カタログ

2. 焼入れ温度の検証

この第2項はマニアックなので読み飛ばしてもらった方がよい。焼入れ温度はおそらく850℃ぐらいでOK。夏休みの自由研究のテーマとして扱うのであればご一読を・・・

焼入れ温度の検証において問題なのは、”焼入れ温度が鋼の成分によって変わる”ということだ。ペグの材質がなんなのか詳細なところはわからない。スチールと書いてあったり、鉄と書いてあったり、材料エンジニアからしたら許しがたいほど適当なのが現実。ただ、入手性、加工性を考えれば、構造用炭素鋼S45Cもしくは構造用圧延材SS400なんだろうと思う。鍛造ペグも材質はかわらないだろう。ピンペグ、鍛造ペグの違いは作り方(工法)であって材質ではないと思われる。また、材料単価の高い合金鋼はまず使わないと考えられるので、Cが0.45%ぐらい入った鋼、つまりS45Cで焼入れ温度を検討しておけば、80点ぐらいとれると思う。そもそも温度制御が完全じゃないので気にしたらダメだ。

ここで便利なのが以下のFe-C平衡状態図だ。焼入れの目的はマルテンサイトという硬い組織を得ることになる。マルテンサイトを得るには、ざっくり言ってオーステナイト(Austenite)まで温度をあげて、そこからペグを水にいれて急冷、つまり焼入れをすることになる。C量がおおよそ0.45%だと仮定した場合(横軸がCの含有量)、A3点は770℃ぐらいであろうか。焼入れ温度はA3点+50℃とすると820℃、どうせ温度制御がいい加減なので820℃から870℃ぐらいということで850℃で良いだろう、という算段だ。温度が高すぎると再結晶という現象が起きて靭性を低下させるのでほどほどがよい。

Fe-C平衡状態図

 

3. ペグを赤く光っている熱源に投入

熱源にペグを投入する。うちわで扇いでやると温度が上がるので、色を見ながら適宜対応していただきたい。5分もいれておけばいいような気がする。ライトに照らされると色の判断ができないので、照明は消して作業するのがおすすめだ。

もう、この時点でゾクゾクするぐらい楽しい。鋼はオーステナイトになっているのだろうか、というかそもそもなぜ鉄は変態するのだろうか、興味が尽きない。

熱源に投入されたペグ

 

4. 水槽にペグを投入

トングでペグをつかみ、すぐさま水にいれて急冷する。瞬間芸なので写真がない。この工程こそが焼入れであり、たばこの火を体に押し付けることはヤキ入れである。無事、無拡散変態したことを願うばかりだ。

5. ペグを焼き戻し

焼入れしただけだと、固すぎて脆くなる。硬くて粘い鋼が構造用部材に求められる条件であるため、焼き戻しをする必要がある。550℃ぐらいで1時間程度、写真のように熱くなさそうなところに置いておけばいいと思う。その後は徐冷するとよい。

焼もどし中のペグ

夏休みの自由研究としてはちょっとマニアックすぎたかもしれない。ただ、産業の基礎は鉄であることに変わりがないので、工学を志すお子さんにはいいかもしれない。ただ、変化していることを確かめる手段が”手で曲げて硬さを確認する”ぐらいしかなく、もうちょっと数値で確かめる手段が欲しい。

 

番外編 エリッゼステークの強度

焼入れしたペグがないものかネットで探したら見つけた。村の鍛冶屋・・・エリッゼステークを使っていながら知らなかった・・・

ちなみに我が家のエリッゼステークは赤の18cmを採用している。パンダTC用に買ったが今のところベストだと思う。緑色の補色は赤色、色彩的に合わないわけがない。

赤いエリッゼステーク18cm

村の鍛冶屋のwebサイトに書いてあったのが、焼入れしたペグとしていないペグの比較表だ。焼入れによってざっくり2倍程度の強度が得られることが理解できた(曲がり始めの応力と書いてある図)。ちなみに応力は単位面積あたりの力なので、記述は間違い。他社メーカーの比較(おそらくスノーピーク)も断面積が違うので・・・比較ってどうなんだろうか。しかも耐力(曲がり始めの応力)をよくよくみると他社の方が高い。

ちょっと間違っている村の鍛冶屋のページ

リンク元:村の鍛冶屋

 

ちょっと突っ込みどころが多い村の鍛冶屋のwebサイトだったが、エリッゼステークは良い商品だと思う。ogawaの限定版レクタタープt/cと白いペグが自己満足度を高めてくれる。

エリッゼステーク白

“夏休みの自由研究!?ペグの焼入れを考える” への1件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。