フジカハイペットの特許とキャンプの相性

火を扱い、暖をとるのは人間固有の営みだ。ただ、テントの中で暖をとる際に焚き火をやるわけにはいかない。また、薪ストーブも設営面からハードルが高い。ということでキャンプ初心者の我が家はフジカハイペットという石油ストーブを導入。石油と大雑把に言っているが、この場合は石油=灯油(ケロシンkerosene)となる。

キャンプに映えるフジカハイペット

フジカハイペットはすでに比較やメンテ、給油の情報が豊富であるため、本記事では詳細なレビューはせず、よく目にするけど詳しくは見ない特許に関して調べてみた。特に、フジカハイペットの特許技術がどのようにキャンプに活きているか、相性はどうか、エンジニアの視点から考えてみた。エンジニアのサガというか、やはり工業製品の特許は気になるものだ。また、反射板の自作についても少し触れてみた。興味があればみていただきたい。

アウトライン

 

1. 我が家の石油ストーブ

我が家のメインの暖房には、株式会社フジカの石油ストーブであるフジカハイペットを使っている。KSP-229-22C-J2R-WHという型番のもので、白の反射板付きモデルだ。上位モデルには整流リング搭載のものがあるが、耐風性をあげるものらしい。整流リングがついていないので風が石油ストーブにあたると、ボボボボ・・・と音がなる。ただ、そもそもキャンプ場ではテント内でしか石油ストーブは使わないのでよしとしている。ちなみに整流リング付きは1万3千円ほど価格が上がるので、後付けもできるそうなのでひとまずスタンダードなものを購入されてもいいと思う。

我が家のフジカハイペットの燃焼筒

キャンプ場へのフジカハイペットの持ち運びには、スノーピークのレインボーストーブバッグを使っている。たかがケースに高いお金をかけるのは・・・と思うのだがジャストフィットで使い勝手がよいのでおすすめだ。家で灯油を満タン(4L弱)に入れていけば、1泊2日なら予備の灯油が必要にならない場合が多い。

キャンプ場への運搬はスノーピークのレイボーストーブカバー

 

2. フジカハイペットとキャンプの相性

テントの中で使うとほんのり明るくなり、暖色系の光は妙に落ち着いた雰囲気となる。暗闇の中でぼんやり光る赤色は不思議と懐かしさを覚え、灯油の燃焼した匂いとともに幼少期の記憶がよみがえる。キャンプでは、寒くなる秋からGWまでがフジカハイペットの季節といえる。

暖かい光を発するフジカハイペット

狭いテント内には反射板付きのフジカハイペットがベストだと思う。反射板付きモデルの一番のメリットは、テントの隅に石油ストーブを置けることにある。つまり、設置の自由度が増す。幕体から50cm程度空ければ経験上OKで1mもあければなんら問題ない。フジカハイペットとキャンプは相性がよく、多くのキャンパーが使っているのも理解できる。ただし、テントにガイロープを張り、突風対策は絶対に必要だと思う。また、念のため一酸化炭素警報機は1台は持っておきたい。過度な安全は不要だが、最低限の備えはあった方がよい。

 

3. フジカハイペットと家の相性

普段は家でお留守番のフジカハイペット。反射板つきを購入したので、テント同様に部屋の隅におけるため家でも相性がよい。キャンプで使えるものは家でも使いやすい。

家でもフジカハイペット

フジカハイペットと次女とリラックマ。愛知に位置する我が家は真冬でもこれ1台で十分暖まる。今時の高気密住宅であればかなり暖かい。

ムスメとクマとフジカハイペット

ストーブ付近の床もほんのり暖かくなるため、寒い日は子どもたちがごろごろころがっている・・・

 

4. フジカハイペットに使われている特許技術

このフジカハイペット、公式サイトの電話注文でしか購入できず、このご時世に少し怪しい雰囲気すらする会社だがストーブの人気は抜群らしい。

公式:フジカハイペット

ちょっと怪しい、と書かせていただいたが株式会社フジカの電話対応、実際の対応はしっかりしている。事実、購入後に燃料計(フロート)が動かなくなり、電話して対応していただいたが誠実な受け答えで恐縮だった。ただサイトを見ると、やたら模造品に対する警告がうるさかったり、特許がなんたらという記述が目立つ。アルパカストーブへの警告なんだろうが、王者はどっしり構えていてもいいように思う。フジカハイペットに関する特許を調査し、以下リストに列挙した。

  • 特開2005-221149 対流式暖房装置 拒絶査定
  • 特開2004-028517 灯油ストーブ 拒絶査定
  • 特開2003-207125 液体タンクの構造 拒絶査定
  • 特開2002-195512 芯上下動型タンク式灯油ストーブの芯構造 未審査
  • 特開2001-272040 芯上下動型タンク式灯油ストーブの芯構造 拒絶査定
  • 特開2001-031098 液体タンクの構造 登録査定
  • 特開平07-239124 石油ストーブ 拒絶査定

拒絶査定とは、特許庁がこの技術は先行技術があって特許になりませんよ、と突っ返した結果となる。日本の特許庁は拒絶庁とも揶揄されており、申請されても一発で通ることはまずない。

これらを確認すると、特許権がとれているものは”液体タンクの構造 特開2001-031098″のみとなり、灯油ストーブ本体の特許権はとれていないことがわかる。Safetinaという登録商標が上記特許になるのだろう。たしかに公式サイトには”特許Safetinaタンクは転倒時でも・・・”とここだけ特許という文言がハイライトされている。クルマによる移動が発生するオートキャンプにおいて、灯油が漏れにくいという特許技術は極めて強いアドバンテージを有するように思われる。

出典:特開2001-031098

このsafetinaタンクの特許は1999年7月19日に出願されているため、特許権が認められるのは2019年7月18日までとなる。したがって、平成が終わり令和の夏を過ぎれば特許切れ、つまり真似してもOK、ということになる。ただ、日本人は先行技術があると基本的には真似したがらない民族のような気がしないでもない。

ちなみに反射板を自作される方がいらっしゃるが、これは特許侵害にはならない。言葉が悪いが真似してもOKだ。特開2005-221149は反射板に関する発明であるが、拒絶査定をうけている。個人的には、よくこれで出願したな、と思うレベルであるがテントの隅における優位性を考えるばたしかに出願したくもなる。

出典:特開2005-221149

フジカハイペットの反射板を自作するための図面を以下に示す。拒絶査定を受けているとはいえ、トレースは倫理的にまずいと思うので、オリジナルとは寸法が異なる。ただし、問題なく反射板として使用できる。

フジカハイペットの自作用反射板の図面

また、リンク先のアルミ板の寸法をベースに反射板を設計しているので、切断が不要で曲げるだけでOKだ。設計とか難しいことを言っているが、60~70mm幅で40°ずつ曲げればできてしまう。別記事に自作方法の詳細を示してあるので興味があればご高覧いただきたい。

別記事:フジカハイペットの反射板を自作

5. 特許技術とアルパカストーブ

特許がどうのと話題にあがるのが、フジカハイペットの対抗馬であるアルパカストーブだ。なるほど、うまいことできている、と言わざるをえない。形状や仕様をマネしても、タンクの部分の特許を使わなければ違法じゃない。フジカハイペットをマネしているんじゃないか?という疑惑がかけられているが、まぁそういうことなんだろう。余談であるが、アルパカストーブにも純正で反射板が用意されており、そちらが万が一でも特許権が認められるとフジカハイペットの反射板付きモデルが販売できなくなる。そのためにひとまず特許申請をした・・・のかもしれない。


出典:https://www.amazon.co.jp

ちなみに発明者はすべて代表取締役の大野氏1名のみだった。こういう場合、ワンマン経営や同族経営が多い傾向にあるような気がする。また、特許開発有限会社という特許収入を得る会社も立ち上げており、税金対策かな?と思えてしまう。真実はわからないがフジカハイペット自体は良いものであるため、少し気になる。

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